DJの歴史

以前ダンスホールには、ミキサーやイコライザ、ピッチコントローラなどは存在せず、一台のレコードプレイヤーを使い、フロアの音楽を提供していた時代がありました。
また現在でも、ミックスやイコライジングを施さないDJがいます。
「クラブDJ」の登場は、80年代末から90年代初頭にかけてといわれています。

アメリカやヨーロッパを先頭に、それまでのポピュラー音楽のライブ形式を一変させる「クラブ」と呼ばれる空間が爆発的に広まりました。
クラブDJが登場した当時は、楽器を演奏せず、歌も歌わないで、オーディオ機器のボタンだけ押している連中を「ミュージシャン」と呼ぶことには抵抗を感じる人が多かったようです。

クラブでは、DJが陣取るブースの中には、鍵盤もギターもありません。ターンテーブルとシーケンサー、ミキサーや、音源となるアナログレコードやCDがあるだけです。

DJが音楽を生む過程は「楽器の演奏」というより、「機械の操作」なのです。
ターンテーブル(アナログレコードプレーヤー)の回転を操作して出す「スクラッチ・ノイズ」で打楽器的なアプローチをすることもありますが、全体の中では例外的です。

DJたちは50年を超えるポピュラー音楽の膨大な蓄積の中から「素材」を探し出し、それを組み合わせるという、新しい演奏方法を確立し、次第に「楽器」や「演奏」といった「ミュージシャン」に対する定義が改められていきました。
デジタル技術が音楽に入ってくることで、これまでのようにギターのコードやピッキング、鍵盤の運指を練習しなくても、音楽をゼロから創造し、演奏することが可能になったのです。

70年代末のパンクロックが「いかに革命だ、破壊だ」と叫んでも、彼らはちゃんと楽器を練習し、演奏していました。
これに対し、DJは楽器を演奏する訳でも歌を歌う訳でもありません。

これこそ「音楽に革命を起こした」といっても過言ではないでしょう。

DJは取扱説明書を読み、音源を探してきて、ボタンを動かせば、リズムや音程が多少おかしくても、コンピューターが自動的に修正までしてくれます。
これはエジソンが蓄音機を発明し、目の前にミュージシャンがいなくても音楽を楽しめるようになって以来の、100年に一度の大変革です。

しかしDJはまぎれもなく、かつてない音楽を奏でており、音楽に革命を起こしたのですから、ミュージシャンと定義してよいと考えます。

今では数多くの人が「クラブDJ」になりました。

ここで問われるのは演奏技術ではなく、今や膨大なポピュラー音楽の「図書館」に入って、魅力的な「素材」を探し出し、それをサンプリングし、ほかの音(シンセサイザー、ターンテーブルのスクラッチ、ラップ)と組み合わせるなどの技術です。
「音楽をいかに深く知っているか」というセンスが、音楽の優劣を作るようになったのです。

「プロとアマチュア」、「演奏者と聴衆」といった区別は意味を失います。
誰でもクラブDJに、ミュージシャンになれるのです。

DJには、ひとつのクラブで専属になる人や、フリーで様々な店でプレイする人もいます。
客層や店の雰囲気によって選曲するため、多様なジャンルのレコードを大量に持ち歩くこともあります。
自分が所有するものはそれ以上のアルバムが必要になってきますので、徐々に買い集めるにしても、かなり膨大なコレクションを保有することになります。

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